「運命の扉 NO.5」 ~ 私の男(あの人) ~

『運命の扉 NO.5』 ~ 私の男(あの人) ① ~

占いの予約に遅れる人は殆どいない・・・。

15分過ぎても連絡も無い事に、私はその日久しぶりに腹を立てていた。
もう何日も降り続いている雨のせいもあり、少し遅れても
許されるかも・・・と、私は自分の心に言い聞かせた。
彼女がその日最後の占いの予約だった事もあったので
諦め掛けていたのかもしれない。

30分も遅れて来た彼女は、雨なのか、涙なのか、解らないくらい顔が濡れていた。
ただ、その中で彼女の目だけが赤くギラギラと鋭く光っていて、
悲しみの涙ではなく挑戦的だった事だけは鮮明に覚えている。
「ここに座って!」
チョットきつい言い方だったかも知れない・・・。
「遅れてすみません」
一言そう言うと、椅子に座った彼女はそのまま1時間以上泣いていた。

人が時間(とき)をさまよう時、誰も何も言えない・・・。
その言葉どおり私も何も言わず、そのまま彼女の泣き声を雨の音に重ねて聞いていた。
泣きたい時は思いっきり泣いた方がいい・・・。

その日、彼女は何も話さず、鑑定料だけを無理やり私の手に預けて
同じ雨の中帰っていった・・・。
まるで映画のワンシーンを見ているようだった・・・。

何もしていない私のプライドは傷つき、その鑑定料を静かに封筒にしまい『預かり』と
書きながら、何故か私も自分の若い頃を思い出していた。
「彼女の涙の訳」に酔わされた1日だった。

3日後、彼女はもう一度、電話で予約を入れてきた。
その時、彼女から預かった鑑定料だけが私の手の中で
彼女の忍耐の重さを私に思い出させていた。


②につづく

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