「運命の扉 NO.10」 ~ 海に溺れた月 ~

『運命の扉 NO.10』 ~ 海に溺れた月 ① ~

「私、本当に別れたいんです!でも、駄目なんです!
何故か、又、彼に電話しちゃって・・・。
どうしたら別れられるんでしょうか?
このままじゃ、何も変わらないし・・・、とにかく別れたいんです。
どうしたら、彼の事が忘れられますか?どうしたら・・・」

彼女の目から流れ落ちた涙が占いの鑑定表を濡らし、『不倫』という重い二文字を
浮かび上がらせていた。

彼女の崩れ落ちていく背中に、私はすでに過去になってしまった遠い昔を思い出していた。


何も考えず言われるままに飛行機に飛び乗ったあの日。
鳴る筈のない電話を待ち続けて眠ってしまった土曜日。
奪うでもなく、飽きる訳でもなく、繰り返される、止まり続けた時間。
離れては引き戻り、まるで潮の満ち引きのように漂う波の華。
何度も別れようと思って、言い争い、潰されていく二人の短い密会。

「貴方みたいなのが一番性質(たち)が悪いのよ!
結婚したいんでもない、お金が欲しいわけでもないって言うのが・・・!」
突然の知らない女の人の訪問。
そして、あの人によく似た男の子の一言。
「僕もパパと遊びたいので、お姉さんはもうパパに会わないで下さい」

ボロボロに成っていく自分を、その弱い自分が自分自身で支え、私は今度こそ本当に
死んでしまうんじゃないかと・・・。

何度別れを決心しても、どちらからともなく、又寄り添い、安心と不安の間で細かく
流れていく時間。

それでも、もう今度こそ終わりにしなければと決心した日。

「貴方には、もう私を止める事は出来ない!
貴方は、今後二度と私を育てる事はない!
私は、二度と貴方のところには戻らない!」
そう言った私に貴方は少し困った顔をして、
「君は、きっと又戻るよ」
と、呟いた。

土砂降りの雨の中、振り切ったあの人の手は、あの時、あの日の雨よりも冷たく震えていた。

純愛が崩れた日、
私は何が欲しかったのだろう?何を求めていたのだろう?いったい、あの時!

それは沈む所を忘れてしまった月のように、
私は、ただ、ただ・・・、時の中で海に溺れていった。

ただ会いたい、会えれば・・・何もいらない。
その純粋で美しい素直な思いが私の思いとは別に他人を傷つけているとも知らず・・・。


②につづく

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