「楽屋の憂鬱 NO.2」 ~ 禁じられた遊び ~
『楽屋の憂鬱 NO.2』 ~ 禁じられた遊び ~
5年ぶりに、店にギターを置く事にした。
「楽屋」を最初始めた頃、将来はライブハウスをやりたいという夢があったので
置いてあったが、1台は盗まれ、2台は壊されてしまってから懲りて置くのを止めてしまった。
音楽が好きでギターをやっていた事のある人なら、楽器の扱いは慣れているが、
素人がましてやお酒をガンガン飲んでいる人に「丁寧に扱ってくれ」と頼んだところで
所詮無理な話なのだ。
盗まれたのは心外だったし、反対に勇気があるな~とただただ感心したが、
壊される事も致しかたない、置かなければいいのだという事に気が付いた。
久しぶりに陽の目を見たギターはお客さんからの預かり物だ。
この5年、私の家の押入れの奥で出番待ちをしていた彼に、
「お待たせ!お帰り!今度は大丈夫だからね!
時代が変わって泥酔する人もいなくなったし、昔みたいに、馬鹿みたいに混んでいないから、伸び伸びやってもらえるよ」
と寂しく声を掛けながら、ケースから出してやると弦はスッカリ錆び付いて埃を被っていた。
とにかく弦を換えてやろうと弦を外したまでは良かったが、
私自身がギターに関しては素人なのだから弦を張り変える事が出来ないのに気が付いた。
まあ、今日のところは身体を磨いてあげる事だけにした。
アルバイトの女の子でバンドを組んでいるトヤッチに早速電話で報告をする。
「あのネ。店にギターを置く事にしたんだけど、私もチョット出来ないって言うのもなんだから、
少し弾けるようになりたいんだけど、店が暇な時に、教えてもらいたいんだけど・・・、
『禁じられた遊び』!」
暫しの沈黙の後、トヤッチは笑いながら
「沙羅さん、誰も『禁じられた遊び』は聴きたいと思わないですよ。
沙羅さんが、よく歌う中島みゆきとかを練習して、弾き語りをやった方が
いいんじゃないですか?」
ガアッツ~ン!
言っている事が当たっているだけに、ショック!
何で私はギターと言えば『禁じられた遊び』なのだろうか?
しみじみ昔の人なのだと自覚する。
半分納得しないまま、中島みゆきの歌の選択を始めた。
3日後、深夜に来たお客さんに弦を張ってもらい、後は音を合わせてもらうだけとなった。
その日はカラオケをガンガンやっていたので無理だったが、暇な日に来てくれたお客さんに
音を合わせてもらった。
彼はサラリーマンだが今でも現役でギターを人前で弾いている事もあってか、
アッという間に音を合わせてしまった。
しかも、その週末に結婚式で6曲弾かなければならないと言って、
それようの楽譜も持っていた。
さっそく弾いて貰う。
曲は宇多田ヒカルの「ファースト・ラブ」、
スタンダードナンバーの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」・・・他。
いつの間にか、みんなが自然に、彼に注目する。
みんなの目が自然に彼の手に吸い込まれていく。
そして彼の指が異常に長くなっていく。
弦の上を滑り落ちる長い指がギターと一体になっていく。
「楽屋」をやさしいギターの音が踊り始める。
不思議な空間が生まれた。
たまたまだが、その日、彼一人だけがギターを弾けた。
そのせいか、まだ5小節も弾いてないのにみんなが感動する。
「オウ~!」
その度に彼は
「まだ、伴奏なんだけど」
ギターを弾ける人にはこの気持ちは判らないだろうが、
ギターを弾けない私にとっては伴奏をチョット聴いただけでも、その後の壮大なドラマを
想像して興奮してしまう。
「凄いね~、カッコイイよね」
女の子のお客さんとバイトの女の子と3人で相槌を打ちながら、女性陣は勝手に盛り上がる。
隣で、男のお客さんが初めはおとなしく聴いていたが、
10分もしないうちに落ち着きがなくなって、
「もう、カラオケやろうよ!」
彼ばかりが注目されて、彼ばかりがモテテ、チョット焼きもちを焼き始めた。
「チョット静かにしてよ。もうチョットだけ聴こうよ!」
即席のファンクラブの女性陣がいっせいに反発する。
堪らず、仕方なく席に座る男性陣。
ギターを弾いていた彼も少し悪いと思ったのか、止めようとする。
ギターの音を合わせてくれる時も遠慮がちに
「僕で力になれるのなら・・・、音合わせられるけど・・・」
と言ってくれたのを思い出した。
今や、彼のすべての言動が優しく格好良かった。
慌てて私は言った。
「あのさ、『禁じられた遊び』って出来る?」
私は言ってしまった瞬間、自分の中でなぜ『禁じられた遊び』なのか?と思いながら、
遅まきながら口を押さえた。
でも彼はやっぱり格好良かった。
私のリクエストもすんなり、
「得意だよ。俺、最初がクラッシックだから」
彼の心地良いギターの『禁じられた遊び』が流れ出した。
その時、私はふと思った。
「あ~そうか、私って生で『禁じられた遊び』を一度も聴いた事がないんだ。
映画の中でとか、レコードでしか聴いた事がないんだ。だから、執着しちゃうんだな。
決して昔の人間だからじゃ、ないんだ」と。
後日、他の人がギターを弾いた時、すっかりその事を忘れて、やっぱり
「『禁じられた遊び』って出来る?」
と、聞いている自分に気が付いて、私はやっぱり昔の人間なのか・・・と実感させられた。
でもギターと言えば私の中では『禁じられた遊び』が一番なんだな~。
是非、ギターの弾ける人、「楽屋」に来たら『禁じられた遊び』を1曲御願いします。
5年ぶりに、店にギターを置く事にした。
「楽屋」を最初始めた頃、将来はライブハウスをやりたいという夢があったので
置いてあったが、1台は盗まれ、2台は壊されてしまってから懲りて置くのを止めてしまった。
音楽が好きでギターをやっていた事のある人なら、楽器の扱いは慣れているが、
素人がましてやお酒をガンガン飲んでいる人に「丁寧に扱ってくれ」と頼んだところで
所詮無理な話なのだ。
盗まれたのは心外だったし、反対に勇気があるな~とただただ感心したが、
壊される事も致しかたない、置かなければいいのだという事に気が付いた。
久しぶりに陽の目を見たギターはお客さんからの預かり物だ。
この5年、私の家の押入れの奥で出番待ちをしていた彼に、
「お待たせ!お帰り!今度は大丈夫だからね!
時代が変わって泥酔する人もいなくなったし、昔みたいに、馬鹿みたいに混んでいないから、伸び伸びやってもらえるよ」
と寂しく声を掛けながら、ケースから出してやると弦はスッカリ錆び付いて埃を被っていた。
とにかく弦を換えてやろうと弦を外したまでは良かったが、
私自身がギターに関しては素人なのだから弦を張り変える事が出来ないのに気が付いた。
まあ、今日のところは身体を磨いてあげる事だけにした。
アルバイトの女の子でバンドを組んでいるトヤッチに早速電話で報告をする。
「あのネ。店にギターを置く事にしたんだけど、私もチョット出来ないって言うのもなんだから、
少し弾けるようになりたいんだけど、店が暇な時に、教えてもらいたいんだけど・・・、
『禁じられた遊び』!」
暫しの沈黙の後、トヤッチは笑いながら
「沙羅さん、誰も『禁じられた遊び』は聴きたいと思わないですよ。
沙羅さんが、よく歌う中島みゆきとかを練習して、弾き語りをやった方が
いいんじゃないですか?」
ガアッツ~ン!
言っている事が当たっているだけに、ショック!
何で私はギターと言えば『禁じられた遊び』なのだろうか?
しみじみ昔の人なのだと自覚する。
半分納得しないまま、中島みゆきの歌の選択を始めた。
3日後、深夜に来たお客さんに弦を張ってもらい、後は音を合わせてもらうだけとなった。
その日はカラオケをガンガンやっていたので無理だったが、暇な日に来てくれたお客さんに
音を合わせてもらった。
彼はサラリーマンだが今でも現役でギターを人前で弾いている事もあってか、
アッという間に音を合わせてしまった。
しかも、その週末に結婚式で6曲弾かなければならないと言って、
それようの楽譜も持っていた。
さっそく弾いて貰う。
曲は宇多田ヒカルの「ファースト・ラブ」、
スタンダードナンバーの「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」・・・他。
いつの間にか、みんなが自然に、彼に注目する。
みんなの目が自然に彼の手に吸い込まれていく。
そして彼の指が異常に長くなっていく。
弦の上を滑り落ちる長い指がギターと一体になっていく。
「楽屋」をやさしいギターの音が踊り始める。
不思議な空間が生まれた。
たまたまだが、その日、彼一人だけがギターを弾けた。
そのせいか、まだ5小節も弾いてないのにみんなが感動する。
「オウ~!」
その度に彼は
「まだ、伴奏なんだけど」
ギターを弾ける人にはこの気持ちは判らないだろうが、
ギターを弾けない私にとっては伴奏をチョット聴いただけでも、その後の壮大なドラマを
想像して興奮してしまう。
「凄いね~、カッコイイよね」
女の子のお客さんとバイトの女の子と3人で相槌を打ちながら、女性陣は勝手に盛り上がる。
隣で、男のお客さんが初めはおとなしく聴いていたが、
10分もしないうちに落ち着きがなくなって、
「もう、カラオケやろうよ!」
彼ばかりが注目されて、彼ばかりがモテテ、チョット焼きもちを焼き始めた。
「チョット静かにしてよ。もうチョットだけ聴こうよ!」
即席のファンクラブの女性陣がいっせいに反発する。
堪らず、仕方なく席に座る男性陣。
ギターを弾いていた彼も少し悪いと思ったのか、止めようとする。
ギターの音を合わせてくれる時も遠慮がちに
「僕で力になれるのなら・・・、音合わせられるけど・・・」
と言ってくれたのを思い出した。
今や、彼のすべての言動が優しく格好良かった。
慌てて私は言った。
「あのさ、『禁じられた遊び』って出来る?」
私は言ってしまった瞬間、自分の中でなぜ『禁じられた遊び』なのか?と思いながら、
遅まきながら口を押さえた。
でも彼はやっぱり格好良かった。
私のリクエストもすんなり、
「得意だよ。俺、最初がクラッシックだから」
彼の心地良いギターの『禁じられた遊び』が流れ出した。
その時、私はふと思った。
「あ~そうか、私って生で『禁じられた遊び』を一度も聴いた事がないんだ。
映画の中でとか、レコードでしか聴いた事がないんだ。だから、執着しちゃうんだな。
決して昔の人間だからじゃ、ないんだ」と。
後日、他の人がギターを弾いた時、すっかりその事を忘れて、やっぱり
「『禁じられた遊び』って出来る?」
と、聞いている自分に気が付いて、私はやっぱり昔の人間なのか・・・と実感させられた。
でもギターと言えば私の中では『禁じられた遊び』が一番なんだな~。
是非、ギターの弾ける人、「楽屋」に来たら『禁じられた遊び』を1曲御願いします。
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