「運命の扉 NO.12」 ~ ハイヒールのかかと ~

『運命の扉 NO.12』 ~ ハイヒールのかかと ② ~

今では、そんな姿の人を見かけることは少なくなった。
やはり、あの当時の流行だったし、今は格好から入らなくても
この10年で職場での女性の地位は急激にアップした。

事実、私のまわりでも女性社長もいるし、部下を30人以上持つ部長、課長、主任クラスの
女性も多い。

そんな中で今の彼女の出で立ちは昔懐かしい香りと同時に、
この時代に現実から取り残された感覚を受けた。

彼女は今の自分の性格の事で悩んでいた。
あの時代を本当の意味でキャリア・ウーマンとして過ごしてきただけあって、
彼女は頭も良く自分の事をかなり正確に、又冷静に分析していた。

「問題は、私の鼻持ちならないプライドの高さにあるんです」
と彼女はハッキリ自分の事を言った。

「30代半ばを過ぎ、会社では、どんどんキャリア・アップし、それなりに認められ、
今は若手を引っ張っていかなければならないという立場もあって、
今の自分は、誰に対しても命令調の話し方になり、キツク成ってしまう。
若い頃のように素直になれないせいか、何でも突っ掛かってしまい、可愛げないな~と
自分でも解っていても直せない。
今では、普通に喋っている言葉さえ、刺々しくて・・・、
このままだと、いつか周りから嫌われて、誰からも相手されなくなってしまうんでは
ないか・・・。
いいえ、既に今の自分は、会社ですっかり無視されてしまっている感じ・・・」と言う。

時代も変わりインターネットの働きも手伝って、この10年で急速に世の中は変わっていった。

世界が本当に近くなった。

仕事でもスポーツの世界でも英会話でも生活スタイルでも。

「この15年は何だったんだろう?と思う。
仕事の為にプライベートも殆ど犠牲にして、結婚より仕事だと思い、ひたすら自立する為の
キャリアを就けてきたのに・・・。
今の若い子は、仕事も結婚も同時に手に入れようとしている。
こんなに頑張ってきたのに、今の私には何もない、空しさだけなんです」

大きくため息をついた彼女の足元の低いかかとのウォーキングシューズだけが
彼女の孤独を知っているように白く光っていた。

同じ時代を生きてきた私にとっては、彼女の最後の言葉にショックを受けずには
いられなかった。

28歳の頃、私自身も何も出来ない自分に不安を覚え何か手に職をつけなければと思い、
カルチャーセンターに通ってみたり通信教育の資料を大量に送って貰ったりしたが、
恋愛に流されては自分を見失うほうが忙しくて、結局は何もしないまま過ごしてしまった。
周りでキャリアを積んでいる彼女のような女性を見ると凄く羨ましかった記憶がある。

でも今、彼女が手に入れたものは孤独と空しさだけだと言う。

今の彼女は仕事なんてどうでもイイから、結婚して子供を生んで普通の女性が望んだ幸せが欲しいと言う。

彼女の15年掛けて積み上げてきたキャリアとプライドが崩れようとしているのが、
今の彼女を見ればハッキリ理解出来る。


彼女の鑑定表には、頭が良い分、プライドが高いと他人から見られる『傷官』と言う文字が
並んでいたが、そのプライドは40代になれば消せる運命にある。

30年以上生きてきて身に付けているものは手放し難いし、
又本人の意志でなくても捨てる事は出来難い。

性格は簡単に変わるものではないが、習慣として本人が意識していけば
変えたり直すことも出来る。

又何よりも彼女にとって救いなのが、彼女自身が自分の欠点をよく解っている事だ。
どこが悪いのか解らない人よりははるかにマシで、後はそれを直すための努力をして
実行していけばイイのだから。


③につづく

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