「運命の扉 NO.19」 ~ 占いと神経系の病気 ~

『運命の扉 NO.19』 ~ 占いと神経系の病気 ① ~

彼女の顔が歪んで見えた。
いや、まがっている。左側に確かに歪んでいた。
私は彼女が本当に神経系を病んでいると思った。

「こんにちは」
私の挨拶に怯えるように頷いた彼女は私の勧めた椅子に何も言わず座った。

「今日は何を一番聞きたいの?全体話すけど・・・、一番聞いてみたい事は何かある?」
「あ、あ、あ、あ、あ、の、の、の・・・」
極度の緊張によるドモリでは無く、これは本当に病気から来る言語障害だとはっきり解った。

私はさり気なく時計を確認した。
14:10
私は彼女の占いの後の私自身の今日のスケジュールを思い浮かべていた。
彼女の会話から考えて、今からかなり長い時間が必要になると思ったからだ。

「ちょっと、ごめんなさい。一本電話するね」
私は席を外し15:30からの打ち合わせのスケジュールを動かす決心をして、
電話で相手にその旨を伝えアポイントをキャンセルした。

これで彼女との長いお芝居の舞台が幕を開ける準備が整った。

本来なら1時間の鑑定時間なのだが、前に一度神経系の病気の人の鑑定をした時、
本人の精神が安定出来ず3時間以上も居座られた事があり大変な事になったからだ。

又、予約を受ける時点で神経系の病気だと本人が解っている場合は話をして
お断りする事もある。
それは占いではどうしようもなく、専門のお医者さんの医学的知識でなければ
治らない場合があるからだ。

彼女の場合、予約のやり取りすべてをメールでしたので、私自身、彼女との会話が
無いまま鑑定を約束してしまったのだ。

私はさり気なく席に戻ると、
「ごめんね。さぁ~てと、何が聞きたい?」
と普段どおりに鑑定を始めた。

私の問い掛けに俯いたまま何も言わず考えている彼女を、私は我慢強く見つめていた。

3分くらい経っただろうか、おもむろに顔をあげた彼女は左側の顔面をピクピク痙攣させ、
心の奥底から絞り出すように小さな声で話し始めた。
「しょ、しょ、く、くばの・・・、に、に、にん、げん、か、か、かんけいが・・・」
「あっ、職場の人間関係で悩んでいるの?
ゆっくりでイイから、話してみて・・・、時間の事は気にしないくていいから」

病気の彼女にとってはかなり酷な事だが、
今は聞くしかと言うか聞かなければ私と彼女の間には何も始まらない事は解っていたので、無理にでも彼女に話してもらわなければならないのだ。

「後の約束がキャンセルになったから、充分時間はあるから・・・、ねっ!」
本人がドモリがちの話し方を気にしているのに気が付いた私は時間があると言う事を
強調して、彼女が安心して話が出来るように嘘をついた。
「だ、だ、だいじょうぶ、ぶ、で、で、ですか?」
「大丈夫!ゆっくりでいいから話して?」

彼女は1時間以上掛けて、小学校の頃からの事を話し始めた。


②につづく

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