「運命の扉 NO.22」 ~ 天使の盾 ~

『運命の扉 NO.22』 ~ 天使の盾 ③ ~

彼女は私の連絡を待っていた。
彼女も私に、彼との接触を頼んだ時から分かっていた。
もう二人では、どうしようもないという事を・・・。
そして自分ではコントロール出来ない自分の心を持て余していた。

再び訪ねて来た彼女に私は静かに言った。

「いい男性(ひと)だね~、彼は・・・。
今時・・・、珍しいくらい誠実だし、自分の意見を確り持っているし・・・、貴方があんなに彼に
酷い事ばかり言っているのに、彼は貴方の身体の事ばかり気遣っていた・・・」
彼女は黙っていた。

「貴方が彼と別れた後、未練を持つのもよく分かるよ。本当に今時珍しいよ。
何で別れたのかね~、あんなイイ人と!」
彼女の瞳から大粒の涙が流れた。

「今更言っても仕方ないけど・・・、彼から田舎に帰る相談があった時に少し考えれば
良かったね!・・・、でも、もう遅い・・・。
その時が二人の大きなターニングポイントだったんだね」
彼女は泣きながら頷いていた。

「ええ、本当にそう思います。私、今本当に嫌な女になっているのも分かっているんです。
でも彼を忘れられないんです。このままじゃ、子供も可哀想な事も分かっているんです。
でも・・・、でも・・・、仕方ないんです」

私は現実から目をそらしては何も解決しない事を、彼女に時間を掛けて話した。

「彼は田舎の看護士の女性を愛し始めているよ。それは、もう誰にも止められない。
それでも彼とやり直したいの?例えやり直せても、前のようにはいかないよ。
それでもいいの?」
「・・・絶対、もう駄目ですか?」
「貴方が一番知っているでしょ、彼の性格は!そんな彼のしっかりしたところに
惹かれたんじゃないの?」

彼女は顔を伏せて泣いていた。
そして顔を上げると、自分に言い聞かせるように呟いた。
「彼にとって私は・・・、もう過去なんですね。過去の女になってしまったんですね」

「そう貴方は過去の人になってしまったかもしれないけど、貴方のお腹にいる子供は、
彼にとっては今の子なんだよ。彼には貴方のお腹にいる天使までは過去に出来ないんだよ。
だから、凄く悩んでいる、可哀想なくらい・・・。
貴方はその天使を盾にしようとしてるかもしれないけど、彼はその天使を新しい彼女と
未来にする覚悟も出来ているんだよ。女として、恥ずかしくない?」

彼女の目から流れる涙が、彼女の胸をつたいお腹に流れ、天使も一緒に
泣いているようだった。

「これ以上、私には、何も出来ない・・・」
私は彼女の横に座り長い時間彼女の手を握り締めていた。

夕焼けが大きなビルに反射して私と彼女を照らし始めた頃、
彼女は私の手を強く握り締めると私に尋ねた。

「子供は、又出来ますか?」
「うん、肝っ玉母さん系の鑑定書だから、大丈夫、沢山出来るよ」
私はもう一度、子供の事をゆっくり彼と話す事を勧めて、その日彼女と別れた。

3日後、彼女から電話が入った。
「昨日、彼と一緒に病院に行って、手術して来ました」
「大丈夫?」
「はい、大丈夫です、・・・、・・・」

話が途切れたようだったので、私は心配になって聞き返した。
「うん?どうした?」

涙声の彼女の返事が返ってきた。
「彼が・・・、彼が凄く泣いてくれたんです。私と赤ちゃんに申し訳ないって・・・」
「そう・・・、やっぱり彼は、最後までイイ人だったね」

受話器の向こうで、震えている彼女の声が何回も「はい」「はい」と繰り返していた。

「さあ、元気出して頑張ろうね!」
「わ、わ、私、彼のようなイイ人に・・・、又、会えますよね?」
「会えるわよ、貴方は男を見る目はしっかりしているもん、絶対大丈夫!
それに沢山の天使にもね!」

他人になった彼と彼女のそれぞれの旅立ちが今始まった。

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