「運命の扉 NO.34」 ~ 笑顔の行方 ~

『運命の扉 NO.34』 ~ 笑顔の行方 ② ~

「笑えない・・・」
そう言ったまま彼女は黙っていた。
私は彼女の言っている「笑顔の行方」は
彼女の様子から仕事の関係ではないのではないかと思い始めていた。

そして私はふと気が付いた。
彼女が「家では笑えない・・・」と言ったことを。
「家・・・」家以外では笑えるという事になる。
私は彼女の言葉を待った。

5分くらい考えていたのか、彼女の唇が動き出した。
「今、10年くらい同棲している人がいるんですけど、別れようと思っているんです。
それで家賃とか光熱費とか今まで彼に甘えっぱなしだったので、これからはチャント自分で
稼いでいかないと・・・。
彼はイイ人で私の夢をずっと応援してくれて、いつも私には好きな事を思いっきりやればいい
って言ってくれて・・・。別に他に誰かを好きになったとかじゃないんです。
ただ、このままじゃ、私自身彼に甘えて駄目になっていくじゃないかって思えてきて・・・、
とにかく今一人で確り生活して、仕事をバリバリやるくらい自分を追い詰めないと、何の為に
今まで苦労してきたのか分からなくなっちゃう気がして・・・」

彼女は今までも彼以外に同棲経験があって、一度付き合うと結構長い付き合いが多い
らしかった。
しかしその都度、自分の夢を失いたくなくて別れてきた。
ただ今は昔の彼女とは違う。
彼女自身が20代でもない、30代でもない、40代なのだ。
しかも二人は10年も夫婦同然に生活してきている。
そして二人の間には特に変わったことはない。
普通の女性なら、40歳を過ぎていて先の事を考えれば到底別れる事など考えないだろう。

彼女が必要以上に仕事の事を聞いたのはこの事が前提にあったからだった。
彼女の中で希望と夢と野望と不安とが入り混じって、彼女を追い詰めていた。

「自分で会社を始めてから考えるようになりました。これでいいのかなって疑問を持つように
なって・・・。
この2年近く、ず~と考えてきたんですが、一度別に住んだ方がいいんじゃないかと思えて、
最近になって自分でもやっと決心がついて、彼に思い切って言ったんです」
「彼は何て言ってた?」
「今更、言われても・・・、みたいな感じで言われて、そのまま気まずい感じになって、
その話はそのままの状態なんですけど・・・。
私もこれからの事は不安でたまらないけど、やっと決心したことなんで、今はもう私の気持ちは
変わらないんです。
それ以来、家で笑えなくなってしまって・・・。
彼は以前と変わらないんですけど・・・。
彼との会話も急に少なくなって、あっ、でもここ1年は本当に前よりは全然話をしていない
って言うか・・・。
今までも特別干渉し合ったりしなかったから、反対に10年も長く一緒に楽しく暮らせていたん
です。
でも最近は・・・、二人でいて悲しくなるって、本当に辛い。
好きな人が別に出来た訳じゃないから別に住むだけで、彼と別れようとかとは思っていない
んですけど、このままいくと・・・。
自分の都合のいい事ばかり言っているから、ハイ別居してください、ハイ別れないなんて、
通用しませんね。
・・・私、フードコーディネーターの仕事、後3年は思いっきり頑張ってやってみるつもりです。
だから、始めて就職した時と同じようにガムシャラに働いてみようって決心したんです。
今日、もし占いで仕事より家庭に入る方がいいとか言われたら、どうしようかと思ったんです。もう自分では仕事に命掛けてみようくらいまで決めちゃってたから・・・」
と言うと彼女は素直に笑った。
そこには彼女の笑顔の行く先がハッキリ見えていた。

③につづく

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