「運命の扉 NO.37」 ~ 独立という名の孤独 ~

『運命の扉 NO.37』 ~ 独立という名の孤独 ②  ~

今まで少し投げやりで横柄な態度だった彼が私の叫んだ言葉と呆れ顔に
何を言いたいのか察して、急にシュンとなって肩を落とした。

「鑑定の結果を言う前にちょっと聞きたいんだけど、まだ会社起こして3ヶ月も経っていない
のにいいの?判断しちゃって!
普通、会社起こしたら最低でも1~2年は頑張ってみない?」
彼は面目ないというようなことをボソッと言った。
そして私の鑑定に対して答える歯切れの悪くなった彼の言葉から発せられる思いは
すべて本当に甘過ぎる考えで独立した事を意味していた。

「バブルの時代でも、そんな甘いんじゃ・・・」
彼の話を聞けば聞くほど情けなくなっていく私が唯一救いだったと思ったのは、
そんな私の厳しい質問に一度も答えなかった事はなかったことだ。

彼の独立話は本当に甘いものだった。

普通にIT関係の会社でサラリーマン生活をしていた彼はある日会社の掲示板に張ってある
早期退職制度の紙を目にする。
その日、同僚と飲んでいるうちに話題がその早期退職制度の話になり、同僚の一言が
彼を動かす。
「お前はいいよ。システムとか自分で作れるわけだし、独立してもやっていけそうだもんな。
俺なんか辞めてくれって言われるまでは絶対に会社にしがみ付いていなきゃ、駄目なタイプ
だから!」
同僚の単純な褒め言葉に妙に納得した彼は会社を辞める事を安易にも決断する。

独立を考えた彼は新しいシステムを作り出し、お客様にインターネットでそれを利用してもらう
という商売を立ち上げた。
知り合いの事務所に間借りをし、最初はサラリーマン時代の広告代理店の知り合いが
宣伝をしてくれて彼の独立は何の苦労や金銭的な面での工面などもなく始まった。

しかしその宣伝が終わると、急に何もなかったかのように彼の仕事は止まった。
何の準備もなく計画もないまま始めた彼を待っていたのは焦りと孤独の日々だった。
何もしない彼の前を時間が他人事のように流れていく。
いつしか身なりにも気を使わなくなった彼は今ここにいる。

「家族はいるの?」
「ああ、女房がいます。働いているんだけど・・・」
「じゃあ、子供はいないの?」
「いません・・・」
「お金の心配はないんだ?」
「あっ、でもこの2ヶ月給料が出てないんで・・・」
「え~、何言っているの?だって自営でしょ?最初から給料貰おうと思っているの?」
「はい・・・?」
彼は自営がどんなものなのか何も分かっていなかった。


③につづく

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