≪失敗を恐れる NO.2≫

≪失敗を恐れる NO.2≫

それを聞いて、私はそう言えば、彼が今の仕事に対して疑問があると言って他に何かやりたい事を捜し始めたのも、その頃だった事を思い出した。
私は成程と思った。
彼の話は続いた。
「それも会社のみんなが居る前で怒られて・・・、自分的には立場がないって言うか、居たたまれなかったと言うか、その時の事を今でも思い出すと、身体が震えてきてしまって・・・。あの・・・、うちの両親は比較的穏やかな人達で、普段も声を荒げる事もなかったので、僕は両親にも怒られたって記憶が殆どないんです。」
よく見ると、確かに彼の手は少し震えていた。

「ふ~ん、でもその後、周りの貴方を見る目って変わった?」と私が言うと、
彼には全く予想していなかった質問だったようで、顔を上げて私を見た。
「いえ、その時は『初めてなんだから、仕方ないよ』とか、『私なんか、いつももっと怒られている』とか上司もお客さんが帰った後、さっき怒っていた事がまるで無かったかのように『次回は気を付ければいいから、大丈夫だから』って、みんな慰めてくれたり同情してくれた感じでした・・・」

「それって、社交辞令のようなものだと思っている?」私は少し黙っていたが、又続けた。
「皆はそれが当たり前だと思っているし、誰だって、最初から何でも上手くいく人なんていないよ!それが現実だよ!
それに失敗や怒られることは20代でしか出来ないと思う。30代になったらそうそう簡単には許されないと思うよ。だから、今沢山失敗したり怒られたりした方がいいと思うだけど・・・。
怒られたり失敗する事は絶対恥ずかしい事じゃない。ましてや仕事で怒ってくれる人は基本感情じゃないはずだから、本気で貴方の事を心配したり貴方に良くなって欲しいと思って怒っているはず。ちゃんとその後、ホローに入ってくれたでしょう?だから寧ろ有難いじゃない、目をかけてくれているっていう事だから!
だから、失敗や怒られることを恐れないで!」

その後、彼は又ボソッと言い訳するように言った。
「失敗したり、怒られたくないんです・・・。・・・、何だか失敗癖や怒られ癖が付きそうで嫌なんです・・・」
私は彼が言っている失敗癖や怒られ癖の事も充分理解出来るが、人間そうそう馬鹿じゃない、時間差はあるにしても、人間は必ず学ぶし、少しずつでも成長する。
私は本当に彼が小さい頃から怒られ慣れや失敗慣れしていないんだな~とあらためて思った。
「じゃあ、貴方今まで本当に絶対失敗してこなかった?」
「一応、・・・」
「だって、過去に聞いた貴方の話だと、貴方は今まで本当に成功する事しかやっていないでしょ?それは多分貴方の能力の20%くらいの実力を出せば出来る事ばかりじゃない?軽くクリアー出来る事しか挑戦してきていないんじゃない?貴方が考えて出来そうもない事に挑戦したことある?」
「でも無理な事に挑戦しても・・・」そこまで言うと、彼は黙ってしまった。

彼だけではない。
どうも今の時代、生活スタイルも変化し、各家庭での子育ての多様化もあり、親もあまり怒ることもなく、又選択肢も沢山ある中で、自分の子供が失敗しないようにと親が進んで子供のレールを引いて危ない橋を渡らせることもしないように少し過保護になりがちで、その上、学校ではモンスターペアレンツを恐れて、先生が子供を怒る事を避けている事もあるのか、殆ど怒られた経験がない人達が多い。
そのような人達が社会人になって、初めて失敗したりや怒られたりすれば、それこそが20代になっての初めての経験という事になり、物凄く落ち込む事も安易に想像出来る。

今までにも、会社で怒られた時点で萎縮してしまい、自分の全てが否定されてしまったかのように自分で勝手に思い自信を失ってしまい、そしてその後、その事を切っ掛けで仕事を辞めたいと言い出す相談もかなりあった。
こんなに弱くていいのだろうか?
現実、人生は良い事ばかりではないし、殆どが嫌な事だらけなのに、その後、その弱さで生きていけるのだろうか?

私は彼とその後、20代での経験が本当に大切という話を沢山した。
しかし、やはり、彼の顔を見ていて、彼の中では腑に落ちない事ばかりだったようで、まあ今までの事を考えれば、私との話はそれこそ有意義ではなく無駄な時間だったのかと思わざるを得なかったので、仕方ないかと思うしかなかった。

ただ、彼が帰る間際には何故か3ヶ月くらい先の次の鑑定予約を入れたので、私は驚いた。
「先生と話した事を全部理解した訳じゃないけど、話の中で先生は自分の経験した事は自分の経験と言って自信を持って話をしていて、他人の経験は他人の経験として話をしていて、それに関しては自分が経験してないから自分がやった場合の事は分からないとハッキリ正直に言っているのを今聞いていて、自分は一つも自分自身の経験って言える話がない事に気が付きました。
それで、それはそれで凄く何だか格好悪いな~と思って・・・。
それで、とにかく、今までに先生に相談した話の中で、出来る事からやってみようかなと思います。先生は失敗しても見捨てないよね?」
私は彼が最後に変な事を聞いてきたのでビックリした。
「何で~、何で私が貴方を見捨てるの?見捨てないよ~、だって私は貴方の将来を凄く楽しみにしているんだから!」
「失敗したり、駄目でもですか?」と彼が言うので、
「だって、それ含めて貴方の人生で、その貴方の将来が楽しみじゃん!」
と、私が言うと、彼は少し安心したような顔をして
「とにかく今まで、何も経験してないので。
・・・又甘いかも知れませんが、今まで自分が先生に相談した中で一番出来そうな順にやってみます。それで、期限を決めないと、いつまで経っても始まらないと思うから、今回は次の予約を入れて、それまでに一応やってみて、途中経過でもいいから、先生と話をしたいと思う・・・。」
と、彼は笑ってペロッと舌を出した。

まあ、本当のところ、彼がやるかやらないかは、又彼の事だからあまり期待は出来ないが、自分で経験した事がないので、それを自分の事として語れない事が悔しいと気が付いただけでも、彼にとっては大きな前進だと思った。
「じゃあ、3か月後を凄く楽しみにしている!」と言って、私は彼を送りだした。
私のこの思いが、少しでも叶う事を願うしか今はない。

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