「運命の扉 NO.5」 ~ 私の男(あの人) ~

『運命の扉 NO.5』 ~ 私の男(あの人) ② ~

次に私を訪ねて来た彼女は雨にも濡れていず泣いてもいなかった・・・。

先日の事を私に深く謝ると、
突然、
「この男の運勢も見て欲しいんですが・・・」
と言って、男の生年月日を書いたメモ用紙をバックから取り出した。
「彼なの?」
「いいえ、この男は1年に一度、私を抱きに来る男です」
そう強く言った彼女は、しっかり顔を上げ私を見つめ今までとは別人になっていた。
私が不思議そうな顔をしていると、
「彼には私が必要なんです。初めて会った時に、そう強く感じたんです。でも彼は・・・、
彼は・・・何も言ってくれない・・・」
彼女の声は一旦詰まった感じになったが、今日の彼女には涙という文字は無かった。

そして何か決心したように彼との事を話し始めた。

彼とは10年ぐらい前に友達を通じて知り合った。
初めに彼女が言ったとおり、彼を「好き」とかと言う気持ちの前に、
彼に出会った瞬間、何故か、
『彼は自分を必要としている』
という思いを強く感じたようで、

何回か会ううちに、彼女の方から彼に自分を抱くように仕向けた。
しかし、その後付き合うでもなく、1年に一度彼は彼女を抱くと言う。

この10年間、彼が彼女を作って付き合っている姿を見ても、
彼がその女の子と結婚する事は無いだろうと思えるから、
嫉妬する気持ちはまったく起こらなかった。

彼は仕事が忙しくて年齢も35歳を過ぎたが結婚する気配もないので、
とにかく彼の仕事が何時落ち着くのか、彼の結婚運はどうなっているのかを
聞いてみたいと言う事だった。

私は余りにも現実離れした話なので、
【あの日の彼女の涙の訳】を聞いてみた。

彼とは付き合っている訳ではないので、
彼女には他にしっかり付き合っている男の人がいて、
前回の鑑定予約の日にその男の人と別れてきたという事だった。
なぜなら彼のプロポーズを断ったから。

【あの日の彼女の涙の本当の訳】は・・・?

それも、あの彼の事がどうしても気になって・・・、
この10年、こんな繰り返しばかりしている・・・。
「先生、私、本当は彼の役に立ちたいんです!
私じゃ駄目なんでしょうか!
彼は私に何も言ってくれないんです。
でも・・・、
彼は・・・、
彼は・・・、私の男なんです!」

それは、誰にも負けない彼女の心の叫びだった。
そして、誰もが知っている女の勘?・・・が、そこに大きく経ちはだかった。

私は彼女の鑑定を始めた。
「誰の人生でもない。貴方の人生だから。
今日、今、貴方の依頼で貴方の人生を鑑定している。
まず、貴方自身の事を一番に考えてほしい」と言う事を彼女と話し合った。

1時間もすると、時折彼女は笑顔を見せるようになって、自分に言い聞かせるように
「そうですよね。自分の人生ですよね!」
と言う言葉をしきりに口に出すようになった。

その時、私は彼女の心が震えているのを初めて感じた。
横顔で笑った彼女の笑顔が悲しすぎた・・・。
この時間、彼女は10年間の自分との思いと戦っている。
私は抱きしめたくなるくらい、彼女をいとおしいと思った。

何度、彼女は『私の男』からのプロポーズを夢見ただろうか。
他の男からのプロポーズを断わる度に、彼女の頬をどのくらいの涙が流れたのだろうか。

鑑定時間が終わり頃になると彼女は笑って明るく言った。
「先生、今日は彼の運勢は言わないでいいです。チョット、自分で考えてみたいです。」
「いいの?本当に!後悔しない?」
「はい、私、大丈夫です。こんなに私の事を心配してもらったのは久しぶりで
本当に嬉しかったです。良かったです!今日会えて」
私の手を握り締めた彼女は、又、笑っていた。

彼女の帰った後、彼の生年月日が書かれたメモ用紙だけが、
その場に寂しそうにポツンと残されていた。


③につづく

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック