「運命の扉 NO.33」 ~ 失われた記憶 ~

『運命の扉 NO.33』 ~ 失われた記憶 ③ ~

10年くらいが経った頃、
たまたま遊びに来た彼の高校時代の親友と彼女は恋仲になってしまった。
極道の世界にいた彼女が本当に心を許せた相手が彼だった。
その親友は大手に勤めるサラリーマンだったが、彼が暴力団の組長だからといって
付き合いをやめることなく長い間付き合ってきた彼にとっても堅気の唯一の親友だった。

親友も彼女も切れない彼が二人に選択した結論が彼女の背中に背負わせた刺青だった。

「お前が俺と同じ刺青を背中に入れてくれたら、お前のこともアイツのことも
すべてなかった事として水に流そう。今までどおりアイツとも知らない振りをして付き合って
いく。普通だったら、絶対許されない事なんだぞ!」
そう言った彼が彼女は初めて恐ろしいと思った。
そして極道という家業が・・・。
私が承知しなければ、この人は例えあんなに大好きな親友でも殺してしまうだろうと
身体の震えが止まらなかった。
彼女は好きな人を助ける為に刺青を入れることを承知した。

墨を入れるたびに高熱が出て痛みと痒みで眠れない日が続き、何かとても大変な罪を
犯したことに気付き、彼女にはその3ヶ月間は地獄だった。

背中の刺青がすべて完成され落ち着いた頃に彼はわざわざ親友を家に招いた。
そして嫌がる彼女の服を脱がさせ、彼は親友に彼女の背中に彫られた刺青を見せた。
驚いた親友の顔が見る見るうちに困った顔に変わった頃、彼は親友に向かって言った。
「今までどおり、遊びに来てくれよ、こいつも寂しがるからな。俺とお前は兄弟なんだから!」
彼の親友はその日以来、一度も家に来る事はなかった。

彼女の地獄は続いていた。
彼がSEXを強要するたびに、「アイツとやっているつもりでいけよ!」と
永遠に彼女の耳元でささやいた。

家に下宿している若い衆からは
「姐さんは幸せなんだから!本当だったら二人とも大変な目に遭わされて、
生きちゃいられませんよ!それなのにオヤジは全然変わらず姐さんのこと・・・。
もう少し優しくしてやったらどうですか!」と言われ、
彼女は完全に極道の妻という檻の中で暮らすしか道はなくなってしまった。
そして10年の時は流れた。


「大丈夫?」
私は話が止まったのを機会に彼女に聞いた。
「もう、大丈夫です。彼が癌で亡くなったんです・・・。
今はこんな御時世で家業も大変で・・・、それに子供も出来なかったし・・・、
まあお払い箱って言うか、縁もゆかりも無くなったって言うか・・・。
もう私を縛るものはないんです」
そう言った彼女は彼の残した生命保険で刺青を消す手術も受けると付け足した。

「頑張ってね!」
私の言葉に
「先生覚えていてね。今度来る時には全然違う私で、恋の相談でも出来るように
変わって来るから・・・」
そう言って彼女は深々と頭を下げた。

彼女が顔を上げた瞬間、彼女の背中から昇り龍が天高く上がっていくのが見えた気がした。
私は心の中でつぶやいた。
「絶対、忘れないから・・・、頑張って」と・・・。

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