「運命の扉 NO.39」 ~ 結婚という誘惑 ~

『運命の扉 NO.39』 ~ 結婚という誘惑 ② ~

35歳を過ぎた頃になると、彼女の話は会社の誰々が結婚したとか友達の誰々が結婚した
とか自分の恋の話ではなく周りの事ばかりを彼女は気にするようになった。
彼女はあきらかに焦りを感じているようで、決まって話の最後には「結婚したい!私だけ結婚
出来ないかもしれない」とよく口に出して言うようになった。
その度に私は
「ただ結婚がしたいの?相手の事はどうでもいいの?
焦らないで、人と比べることじゃないでしょ?ちゃんと結婚出来る時期がしっかりくるから!」
と言って結婚結婚と焦る彼女に人それぞれの結婚時期をよく説明していた。
彼女が焦って結婚して必要以上に相手に苦労するのではないかと心配だったからだ。


彼女の結婚式から半年が過ぎようとしていたある日の夜中、
彼女が今から旦那になった彼を連れてお店に行ってもいいかという電話を貰った。
時間も夜中の12時半を回っていたので既にお客様は帰り、私も二人とゆっくり話が
出来ると思い彼女達の突然の来店を大歓迎した。
と言うのも彼女の結婚式にどうしても私はスケジュールが調整出来ず参列しなかったために
彼に会うのはその日が初めてだったからだ。

少しハニカミながら挨拶した彼は携帯電話の写真から受けた印象と変わらず落ち着いた
感じを最初は受けた。
髪型のせいだったかもしれない。
彼女より二歳年下の彼だが、甘えん坊で寂しがり屋の彼女を充分引っ張っていってくれる
のではないかと私は勝手に思い込んでしまっていた。

彼女が幸せそうな笑顔で彼の紹介が終わった時、それは起こった。
きっと彼にとったら何の意味もない軽い気持ちで言った言葉だったのだろう。

「いき遅れていたから俺が貰ってやったんだよな!」

しかしその言い方や言った時の彼の態度があまりにも横柄で私にはとても冗談には
聞こえなかったので、「えっ何?その言い方、もう少し・・・」と口に出しそうになったが
彼女の手前黙っていた。
ただ大変不愉快な気持ちになったのは事実。
ここは彼女が連れて来た店なのだから、何もそこで彼女にワザワザ恥をかかせる事を
言うことはないだろうにと・・・、
急に私は彼女が気の毒になってカバーに入ろうと思い何か言おうとあらためて彼女の顔を
見た。

それはたった3秒くらいだったと思う。
さっきまで笑いながら話していた彼女の顔はひきつったまま凍りついたように青冷めて
固まっていた。
私は彼女の顔のあまりの変わり様にビックリして言葉を失ってしまった。
私が見ているのを感じたのか、一度ゆっくり瞬きした彼女は引きつったままの頬を無理やり
吊り上げると、私に向かって諦めたように口だけで少し笑って見せた。
彼女の目は凍りついたまま笑っていなかった。

私はこの瞬間、彼女を哀れに思ってしまった。
そして私は二度と彼を見ることはなかった。

その後、気を取り直そうと彼女は結婚生活のラブラブな話を私に無理やり話していたが、
それには本人も自分で話していながら矛盾を感じるのか、
又彼が何かとんでもない事を言い出すのではないかと怯えて話しているようで、
聞いている私も切なくなるくらいだった。

そんな彼女を横目に彼は何も気が付かないようで、小さな子供がよくやるように
場が持てないのか彼女が話している事とはまったく違う事を言っては茶々を入れていた。

何度も何度も彼女を愚弄する彼の言動にあまりにも彼女が可愛そうで私はそんな彼女を
見ているのに耐え切れなくなって、
「歌でも唄ったら!」と彼にカラオケを勧めた。
またもや呆れた発言。
「合コンで女の子にもてなくっちゃならないから練習しようっと!」
その言葉が冗談で言っているのではないのは、もう既に今までの彼の言動でよく分かった。
彼女の冷めた「そうだね、合コンでもてなくっちゃね」と言う、まるで小さな子供をあやす
母親のような言葉が自然に続いた。

そう・・・、彼は彼女より2歳年下と言うのではなく、ただの子供で、
その言動に全く悪気が無いと言うか悪い事なのかも判断が出来ないほど幼い。
それでも彼は30代後半の男である・・・。

彼女もこの半年で気が付いてしまったのだ。
彼が彼女を女として妻として見ているのではなく母親として見ている事を・・・。
そしてそれは彼女にとっては大変な屈辱で苦痛である事を。


③につづく

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